残念な日本語を現行犯逮捕する

ビジネス文書は、正確に、論理的に、そして美しくありたいもの。一部上場大手企業における管理職経験14年、入試問題の文章推敲経験9年、卒業論文の添削経験18年、ヒューマン・ センタード・デザインや感情心理にも精通した筆者が、気になる日本語を斬ります。

始めるのを終わる

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木更津駅にこんな掲示がありました。「発売終了」「発売を終了」が残念です。「発売」とは売り出すこと、すなわち販売を始めることです。「発売終了」と言うと、「始めるのを終わる」と言っているようなもので、なんとも珍妙です。これを書いた人は、発売と販売とを混同しているらしい。正しくは「販売終了」と書くべきでしょう。相談も受けないのでしょうから、「取扱終了」の方がさらに正確かもしれません。

 「発売終了」ほど深刻ではありませんが、あちこちにある「…をもちまして」「…につきましては」も、あまり適切と言えません。「…をもちまして」は「…をもって」に丁寧語の「ます」をつけた表現です。「…につきましては」は「…については」に、やはり丁寧語の「ます」をつけた表現です。「ます」は、動詞の後につく助動詞です。「…につきましては」の場合、「つく」という動詞に「ます」がついたと考えられます。同じ「つく」でも、「仕事に就く」+「ます」=「仕事に就きます」などは正しいのですが、「…について」の「つく」には動詞本来の意味がほとんどなく、「…について」で接続助詞の働きをする慣用語となっています。「…をもって」も同様です。このように、動詞としての本来のはたらきを失っている「つく」「もつ」に「ます」をつけるのは、あまり適切でありません。接続詞の「しかし」を「しかしまし」とは言わないし、「そして」を「そしまして」と言わないのと同じです。「…をもって」「…については」が適切です。