残念な日本語を現行犯逮捕する

ビジネス文書は、正確に、論理的に、そして美しくありたいもの。一部上場大手企業における管理職経験14年、入試問題の文章推敲経験9年、卒業論文の添削経験18年、ヒューマン・ センタード・デザインや感情心理にも精通した筆者が、気になる日本語を斬ります。

雇用主の専権事項を代行しているのは誰?

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讀賣新聞のある記事に「味の素は所定労働時間を、17年度に、それまでの7時間35分から20分短縮させた」と書かれていました。「短縮させた」って、誰に短縮させたのでしょう。自動詞に「させる」をつけると、他動詞として目的語を取れるようになりますが、「短縮する」はもともと他動詞なので、「労働時間を短縮する」のように目的語とともに使うことができます。他動詞にさらに「させる」をつけると、誰かにやらせる/やってもらうという使役になります。労働時間を決めるのは(組合との協議が必要としても、基本的には)雇用主である味の素であるはず。その味の素が「労働時間を短縮させた」? 珍妙な日本語です。